今回から数回のシリーズで、小売業における成長戦略の方向性について提言させていただきます。SXとは、”サステナビリティ・トランスフォーメーション”とのことで、簡潔に言えば、「SDGsの達成に向けた取り組みを店舗経営に実装させ、ビジネスのスタイルを変革し、企業としての持続性を強化しましょう。」という提言となります。DX(デジタル・トランスフォーメーション)はよく耳にするようになりましたが、それはあくまでも手段であり、実は目指すべき方向付けが重要とされています。その方向付けとして「SX」に注目が集まっています。経営戦略として語らえる概念ですが、これからの店舗運営にも適応するものと考え、『店舗SX』というカテゴリーに絞り込んでみました。今回は、生活者の消費スタイルから、その有効性を述べてみます。
■気候変動への関心 ~危機感が自分事に~
2021/07/25 日経新聞では「干ばつ・ハリケーンなど天候不順で農作物が不作。コロナ禍の輸入制限もあり食料価格が高騰。買えず食料不足に。世界の飢餓人口は昨比1億6千万人増。」との報道がなされました。また、猛暑、大雨被害、ゲリラ豪雨と、誰しもが気候変動を実感としてとらえ、その被害が見える化されるにつけ、危機感が自分事になっている感があります。
内閣府による気候変動に関する世論調査(令和2年11月調査)によると、
◎地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少などの地球環境問題に関心があるか聞いたところ、「関心がある」とする者の割合が88.3%「関心がない」とする者の割合が9.3%
◎気候変動は、農作物の品質低下、野生生物の生息域の変化、大雨の頻発化に伴う水害リスクの増加、熱中症搬送者の増加といった形で、私たちの暮らしの様々なところに影響を与えている。地球温暖化などの気候変動により、このような様々な影響が出ることを知っていたか聞いたところ、「知っていた」と答えた者の割合が93.6%、「知らなかった」と答えた者の割合が6.3%と、報告されています。
■気候変動問題と消費のスタイル
「気候変動問題・SDGsに関する生活者意識調査」(株式会社メンバーズが2020年10月30日に発表)から注目の数字をピックアップしてみました。 欧米と比較して、日本のメディアでは、地球温暖化・気候変動の報道は極端に少ないといわれる中でも、SDGsや地球温暖化問題へ関心は、着実に高まっていることがうかがえます。
- 地球温暖化に関心がある ➡ 約6割(61%)
(前年から18ポイントアップ) - 地球温暖化に対する企業の取り組みに期待している ➡ 約7割(65%)
(前年から14ポイントアップ) - 地球温暖化に対して積極的に取り組む企業は好印象である ➡ 約7割(70%)
- SDGsや地球温暖化問題に取り組む企業の商品やサービスを購入したい ➡ 約5割(53%)
- SDGsや地球温暖化問題に取り組む企業の商品やサービスを「類似商品と同水準あるいは多少高くても買いたい」 ➡ 約8割(79%)
※気候変動問題・SDGsに関する生活者意識調査(株式会社メンバーズ)
https://www.members.co.jp/company/news/2020/1030_4.html
■ 2021年度上期ヒット商品番付
~サステナブルが絶対条件な時代に~
日経MJ(6/16)の1面で、2021年度上期ヒット商品番付が発表されました。
東の横綱には、「サステナブル商品」(環境や社会のサステビリティ―(持続可能性)を重視する商品)が番付されました。紙面で”未来では当たり前になる消費スタイル”と解説されている通り、サステナブルでないと生き残れない時代がリアルになってきています。
メーカーやブランドにおいては、環境配慮型商品や循環型ビジネスモデルの開発を加速させています。小売店舗においては、未来の消費スタイルへの対応・提案と同時に、消費者との新しいエンゲージメント(一体感・愛着)づくりが急務と言えるのではないでしょうか。
■店舗SXのヒントはスウェーデンにあり!
店舗SXの具体的な実装については、サステナビリティ先進国であるスウェーデンの手法を参考にしない手はありません。環境的、社会的、経済的の3つの持続可能性をバランスを保ちながら実現させている点は勿論、とてもシンプルな考え方やその高い生産性には多くのヒントが隠されています。 我々は、スウェーデンのWhywasteとの連携で、”個店でも立ち上げられる店舗SXのソリューション”をご提案すると同時に、国内外の店舗SXの情報をご提供していきたいと考えています。
2021年8月3日
Whywaste Japan シニア・オフィサー 小川訓昌